開講されるコースは年によっても異なります。詳細についてはSOMの公式Webサイトをご参照ください。コース一覧には以下のリンクからアクセスできます。

多くの講義はアプリカントの聴講を受け入れているため、ビジットされる方で授業の聴講を希望される場合には以下のサイトで曜日・時間をご確認の上在校生にご連絡ください。

SOMの授業 / 大学全体の授業)

 

 

必修科目(Core courses)

1年目の秋学期、及び春学期の大半は必修科目を履修します。必修科目の全体像については「SOMの特徴」「Integrated curriculumの全体像もご参照ください。

MGT410 Competitor(教授:Judith Chevalier他)

組織が競争のある環境の中でどのように行動すべきかについて、ミクロ経済をベースに、マーケティング、会計、組織論や政治的観点も踏まえて学ぶ。寡占市場におけるベルトラン・クールノー・ホテリングフレームワーク、差別化とポジショニング、関係継続を前提とした戦略、業界分析と利益分析、競争と協業、反トラスト法や垂直統合などを、スーパーマーケット業界や航空業界、テーマパーク業界等の事例を通じて学ぶ。また、ケースから学ぶだけでなく、スーパーマーケット業界の分析などでは、実際にWal-MartやTargetにチームで趣き、価格や陳列方法、商品の取り揃え状況など、どのような差別化が図られているかを検証し、理論やフレームワークとの照合を行い理解を深める。

MGT430 The Executive

1年目に履修するIntegrated Core Curriculumの集大成ともいえる授業。多様な意見を持つステークホルダーの存在や景気の動向、組織をとりまく複雑な環境の中でリーダーとしてどのように振る舞うべきかを、必修科目で学習した会計やオペレーション、経済学、ファイナンスといった定量的な観点、そしてリーダーシップや組織論といった定性的な観点両方を用いて学ぶ。扱う事例も幅広く、太陽電池の急速な普及に乗じた中国企業のアメリカ進出の是非や、ノルウェーの年金ファンドの最適アロケーションの検討、アリババ傘下のAnt Financialの戦略など多岐にわたる。また、本講義のケースはいずれもYale SOM独自のRaw Caseであるため、限られた準備時間で膨大な情報を取捨選択することが求められ、より実務に近い経験を積むこととなる。扱う分野が幅広いため、特定の講師が担当するのではなく、関係する分野の専門の講師が授業内で入れ替わる点も特徴的。



選択科目(Elective courses)

1年目の春学期からは選択科目の履修が可能となり、2年目は全科目が自由選択になります。また、SOM外の授業も自由に履修可能です。以下では、SOMに特徴的な授業や人気授業をご紹介します。

MGT623 Strategic Leadership across sectors

(教授:Sonnenfeld, Jeffrey)

Yale SOM随一の名物教授であり、経営者論においては今の米国を代表する経営学者であるJeffrey Sonnenfeldが、米国を代表する大企業の現職CEO、元CEOを毎週ゲストに招き、実践的なケーススタディも交えながら、大企業の経営とは?経営者とは?コーポレートガバナンスとは?企業倫理とは?について、大教室で容赦のないコールドコールを交えて語りつくす超人気講義。

 

2018年のゲストスピーカーとしては、GE、Time Warner、CNN、Xerox、Macy’s、Yahoo、Goldman Sachs、McKinsey、Home Depot、Harley-Davidson等々、名だたる大企業の現職あるいは元最高経営責任者が授業にやってきて、学生達と意見をぶつけ合った。日本での知名度はそれほどではないものの、米国でも有数の権威を誇るYale CEO Summitを主宰するJeffrey Sonnenfeldは、トランプ大統領と名指しで批判し合うほどリーダーシップの分野で影響力のある有名な学者。毎週のリーディング課題の量は相当なものだが、第一線で活躍してきた大物ビジネスパーソンと直接議論できる環境は非常に刺激的。

 

MGT624 Human Capital Strategy(教授:Jim Baron

This course focuses on aligning an organization’s workforce strategy, employment practices, and internal structure with its broader mission and competitive strategy. Specific topics include: recruitment and selection; employee training and career development; job design and organizational structure; performance management; compensation and benefits (monetary and otherwise); layoffs and downsizing; diversity and discrimination; outsourcing; international management issues; and social, legal, and ethical issues associated with managing human resources. We will also consider the distinctive human capital challenges facing organizations at different stages of the life cycle (start-ups, rapidly growing enterprises, more mature organizations, etc.). 


MGT893 Nonmarket Strategy(教授:Bach, David

3C(顧客・自社・競合)にフォーカスする従来の競争戦略論を超え、政府や規制当局、ロビイスト、NGO、メディア、そして市民といったNonMarketのプレイヤーが企業経営に与えるインパクト及び対応方法について学ぶ(Nonmarket Strategyについては本記事もご参照)。

 

授業冒頭で習得する(IA)3フレームワーク等を駆使しケーススタディを分析することで、Nonmarket 環境を考慮した企業戦略の立案が可能になる。ケースで扱うテーマはWalmartやPepsi、Uber、Playboy等のアメリカ文化を代表するような企業に加え、英石油大手bpや独Volkswagen, ドバイの港湾管理事業者DP World、シンガポール上場のパーム油事業者gar等、非常に幅広い企業のトピックについて、毎回徹底的に議論を行う。

 

担当のDavid Bachはドイツ生まれ、Yale出身(政治学・国際関係学修了)、ヨーロッパのビジネススクールでの教授経験もあり。幅広いアカデミックバックグラウンドから来る懐の深さ、自身のグローバルな経験による視野の鋭さ、海外教授との共同リサーチ・執筆等により培ったグローバルなトピックについて造詣の深さで、毎回学生の期待以上の授業を行う名物教授。1秒たりとも見逃せない彼の授業の緊張感は、彼が必修科目の"The Exective"を担当した際のビデオ(本ぺージ上部動画の1:06以降)にて是非ご体感ください!

MGT527 Strategic Management of Nonprofit Organizations

(教授:Chevalier, Judith

NPOの行動原理と市場における役割・課題等について学ぶ授業。扱う団体は発展途上国において医療機器を配賦する団体から米国の地方都市における劇場まで広範囲をカバーしており、Nonprofit分野における諸問題とその存在意義をケーススタディを中心に読み解いていく。

 

教授は応用ミクロ経済学が専門であり、企業行動の最適化というミクロ経済学の切り口をベースにしつつ、Nonprofitセクターの実際の状況についてケースで登場したゲストスピーカーを招いて解説する点が面白い。カリキュラムの後半にはチームに分かれて国内外のNPOを1つ選択してプレゼンを行い、最も優秀だったチームの選んだ団体に対してクラス内でファンドレイジングを行う点もユニーク。


MGT655 Entrepreneurship through Acquisition

(教授:Wasserstein, A.J.

プライベート・エクイティ投資の一形態である、Search Fundの投資家であり、起業家でもある、A. J. Wassersteinが、中小・中堅企業の買収・経営・Exitについて議論する。

 

Search Fundとは、投資家から資金を得たCEO志望者(ほとんどがMBA取得して間もない若者:Searcher)が、一から自分で会社を起こすのではなく、既に安定期に入ったオーナー企業を買収して、自らCEOに就任して経営を改善し、会社を成長させ、5-10年後にExitをしてリターンを得るという投資の形態。ファイナンスのみならず、戦略、マーケティング、サプライチェーン、人事、組織論、あるいは経営者・起業家としての人生など、「経営」全般の内容がリアリティをもって学べると評判の人気授業。

 

毎週、ケーススタディの主人公である元Searcherを教室に招いて、経営者・投資家として下した実際の決断について語り、それをもとに議論を深める形式であり、MBAの1年目や夏季インターンで学んだフレームワークがどこまで実際の経営で生きてくるのか考えさせられる90分間は幸福そのもの。

MGT899 Real Estate Finance for Institutional Investors

(教授:Gray, Kevin

ホテル・商業施設・複合施設・オフィスビル等の各ジャンルの不動産のバリュエーションを行う内容。授業は全てケーススタディ、それも数件ある不動産の中で最適な投資対象を選び、チームに分かれて授業内で毎回プレゼンを行うといった実践的な内容。

 

Kevin GrayはPricewaterhouseCoopersのNYオフィスで不動産投資チームのMDまで務めており、不動産業界の最前線にいる投資家とのネットワークを持っている。この為、授業には実際にその物件へ投資したプロフェッショナルが毎回ゲストスピーカーとして招かれ,実務家としての立場から実際の状況と判断について解説を加える。

 

なお毎週の授業後にはNew Haven内のレストランでゲストスピーカーも参加する会食が開催され、業界の裏話や今後の不動産業界の展望について突っ込んだ話が聞けるのも面白い。


MGT523 Monetary Policy (教授:English, Bill

その名の通りFRBの金融政策について学ぶ。2008年の金融危機以降、空前の規模で国債購入を続けてきたFRBが利上げに舵を切った中で、非伝統的金融手段の功罪について他中銀や過去の金融恐慌時の対応等も引き合いに出しつつ解説していく。特にQE・マイナス金利政策に関するFRB・日銀・ECBの比較と、景気後退局面脱出後の出口戦略に関するレクチャーが秀逸。

 

Bill Englishは直近までFRBの上級特別顧問を務めており、講義内容は学問的バックボーンと実務のエッセンスが絶妙に融合している他、FRB勤務時代のコネクションを活かして他中銀の元総裁をゲストスピーカーに招いてのディスカッション等も開催される。

 

授業内容は中級レベル以上のマクロ経済学・ファイナンスの知識を必要とされるが、金融政策を含む当局動向に関心のある方にお勧めしたい授業。

 

MMS in Systemic Riskの必修講義の一つでもある。

MGT683 Renewable Energy Project Finance

(教授:Gross, Daniel

太陽光や風力発電等の再生可能エネルギーは、今や米国の新規エネルギー投資の主流であり、環境系の分野に関心のあるYaleの学生にも就職先として人気の分野。そしてこの授業ほど、太陽光や風力発電事業のプロジェクトファイナンスの組成に必要な金融の実務スキルと業界知識を得られるものはない。

 

講師は、Goldman Sachs 、GE Capital、そしてプライベート・エクイティ・ファンドにおいて数々のエネルギー案件を組成してきた、プロジェクトファイナンスの第一人者であるDaniel Gross。実務家ならではの業界知見にあふれた講義を受けながら、一学期間をかけて、実際の案件の契約書や技術レポートを基に、じっくりと財務モデルを作成する形式で、履修が終わるころには本格的な財務モデリングのスキルが身につく。

 

YaleのOBである講師のDaniel Grossは、母校愛に溢れ、人格的にも素晴らしく、米国のエネルギー業界への人脈も豊富であり、選抜された学生達とともに企業や投資家向けの財務コンサルティング・プロジェクトを行うこともある。エネルギー業界のみならず、投資銀行やファンドに就職する予定のほとんどの学生が履修する人気講義。


[Non-SOM] S&D661 Data Analysis

(教授:Lin, Winston/Aronow, Peter

Statistics and Data Science学部の講義。統計ソフトRを用いて、様々なデータ分析手法を学ぶ。有名な論文の統計分析を再現し、さらにブートストラップ法を用いて頑健性を確認するなど、現実のデータに触れながら様々な分析手法やデータ分析において気を付けるべきポイントなどを学ぶ。

 

確率・統計の基本的な理論を学んだ学生が自分で手を動かしてコードを書きながら実際の分析を検証・拡張する経験を積むことができるように設計されている。受講学生と教員の参加する掲示板を通じて課題への質問やコードの書き方のヒントを教えあうなど、手厚いサポートを受けながら統計言語Rとその応用に触れることができる。統計を専攻する学部後期生や大学院生が主な対象のため、SOMにおける統計を用いた講義よりも進んだ内容も扱われる。

 

私が履修した際にはMBA受講生はおそらく私のみだったが、面倒な手続きも一切なくスムーズに履修することができた。また、Statistics and Data Science学部の校舎はSOMから徒歩10分弱の場所にあるため、前の授業からの移動も容易。このようにSOM外の講義を制度的・物理的に気軽に履修できるのはSOMの強みの一つ。